夢は愚かな避難所

一生見られそうもないものなど、見たいとも思わぬ。

徘徊≠散歩≠進歩

代官山の蔦屋を右手に見ながら歩いていくと、西郷山公園という広場があって目黒?の夜景が見える。こないだ通ったとき、ろくに見えない桜の木の下で多くの人が宴会をしていた。花見したことないなあ、楽しそうだった。

公園を一周して、Y字路の交差点をIの方に歩いてって旧山手通りに戻って西郷橋を渡る。公園側の歩道から橋の反対車線を見ると、ヒカリエがかすかに望める。通りを渡って橋の下を覗くと、以前渋谷から学芸大学まで徒歩で行こうとしたときに通った通りだった。ここを歩くとえらい遠回りだから、あの一回きり、この道は通らなかった。ここに繋がっていたのか。

そのまま旧山手通りを歩いていくと、大使館があった。立派な門構えを見るとそれはマレーシア大使館だとわかった。ぼーっと門の前に突っ立ってると、突然閉まっていた門扉が電動で開いた。これは俺に亡命を促してるのかと思ってびっくりしていたら、背中に乗用車の気配を感じたので慌てて去った。

旧山手通りは246号線にぶつかった。この交差点を右に行くと道玄坂らしい。渋谷がいかに谷底にあるかわかる。246号線の上には首都高が通っている。えらく幅広な道路に圧倒される。一部工事中で、片側4車線はありそうな道路の真下が木で覆われていて、意外な感じがした。

上は首都高速3号線、地上は玉川通り、地下は田園都市線という道を西に歩くと大坂橋があり、それを過ぎると高速道路が大きく曲がるところに来た。いつか見た景色だ。歩道橋に上がっていつか来た池尻大橋駅周辺だと気付いた。このあたりにある図書館で本を借りる用事があって一度電車で来たことがある。氷川神社の階段はえらい急だから上るのは止めた。ここで俺は今日の徘徊の目的地を5年ぶりの三軒茶屋に決めていたから、体力を温存する必要があった。そのまま246を西へ西へ。このあたりは案外入りやすそうなバーや居酒屋が多かった。金があるときに来ようと思う。

だらだら歩いていると三宿を過ぎ、三軒茶屋に着いた。

5年前、上京したての俺、貫地谷しほりの舞台を見にここに来た。ここがそこだとは思い出せなかった。舞台が始まるまでの時間をつぶしたツタヤを覗いてみた。0時ジャストからサザン10年ぶりのアルバムを発売するらしい。

渋谷までバスで帰ろうかと思ったが、深夜料金は420円らしくそれはたまらないから田園都市線に乗って渋谷に戻った。東横線に乗り換えるとき、クロネコヤマトの黒猫立体ポスターの横で、突っ立っている男が、昼過ぎにここに立っていた男だと気付いた。立体黒猫ポスターを通行人が撫でてあと、乱れた黒猫の毛をブラシで整えるのが彼の仕事だ。彼が突っ立ってた間、俺は歩いた。おとといの出来事だったか。

 

 

今朝目覚めたとき、焦燥感があった。こんなことは初めてだった。切ないとも悲しいとも苛立たしいとも違う、焦り。

メールをチェックすると面接をしてくれる旨を伝えるメールが来ていた。焦りが緊張と混じった。焦りをもう少し感じていたかった。