夢は愚かな避難所

一生見られそうもないものなど、見たいとも思わぬ。

夢は愚かな避難所

私の夢は愚かな避難所。雷から身を守るために傘を使うようなものだ。

フェルナンド・ペソア 『断章』123

 

指先が氷柱みたいに冷たくてタイピングがつらい。でももしかしたら動かしているうちに温まるのかもしれない。寒いから布団にくるまって動かない。動かないから寒い。寒いから動かない……。


無学なおれにも好きな言葉はいくつかあって、それはブログタイトルにも拝借した冒頭の言葉と、Carpe diemって言葉と、Hope is a good breakfast but a bad supperの3つだ。好きな言葉だけれど、座右の銘にはなってない。これらの言葉をいつも忘れずにこの言葉を芯から理解して体現できたら、ずいぶんよろしく生きられるような気がする。きっと、「動かないから寒い」と「寒いから動かない」の二つに引き裂かれることなく、そのあわいをさまよえる。


指先が温まるほどの言葉も生まれてこなかった。タイプライターやパソコンの発明によって、書く人たちはじぶんの思考の流れを忠実に文字にできるようになったと喜んだのだろう、たとえば、ブコウスキーがそうだった。
おれは、言葉が次から次へと溢れてきてそれを書きたくて書きたくてしょうがない人間ではないし、思考に速度がないし、タイピングも遅い。
指がとろけるほど大量の、熱い言葉が出てくることはなかった。



「夢は愚かな避難所」という言葉を誰よりも目にしていたのに。避難所から出たくてこんな言葉を表札にしたのか、愚かでも構わないと思って誇らしげに掲げたのか、忘れちまった。


このブログのタイトルはいわばサザンオールスターズにとっての『Southern All Stars』やArctic Monkeysにとっての『AM』でありたかったのに、そこまでのものにする根性もなかったことがまさに、「私の夢は愚かな避難所」の証明のようで皮肉だ。